3月の一ヶ月間、パークホテル東京に滞在しながら制作した大谷有花アーティストルームは、先日無事に完成しました。
このアーティストルームは「秋田の美」を表現したのですが、そのベースにあるものは、日本人の感性や美意識です。これは私の最新の作品シリーズ「はなすがた」のテーマでもあることから、今回制作したアーティストルームもその延長線上にあると考えています。日本人の感性や美意識と一口に言っても、大きなテーマゆえ、その本質に迫り、それを表現することは容易いことではありません。「はなすがた」シリーズやこのアーティストルームについては、過去の私の作品をよくご存知の方ほど、作風が変わったとか、大谷有花の作品らしくないと思われるかもしれませんが、まさにそこがポイントなのです。オリジナリティの追求がアート、とくに現代アートの制作者にとっての至上命題のようなところがあり、私もこれまでの作品ではそう考えながら制作してきましたが、最新の「はなすがた」シリーズにおいては、日本人の感性や美意識という壮大なテーマに立ち向かうための手段として、あえて、ひとりのアーティストとしての個性や感性、美意識といったものを消し去っていくことに必死で取り組んでいます。これがいかに困難なことであるかは、アートを職業とされている方やアート(特に現代アート)を真に理解されている方なら、おわかりいただけると思います。
日本には、古代や中世に詠まれた「詠み人知らず」の和歌などが現代にまでしっかりと残っているといったように、作者個人そのものよりも作品の本質を大切にする文化があると思いますが、それも日本人の感性や美意識がなせる業だと考えています。アーティストとしてのアイデンティティをも消し去った先に、どんな表現世界が見えるのか、楽しみながら苦闘しています。とは言っても、自分の過去の作品を否定したり捨て去ったわけでも、アートのオリジナリティを否定しているわけでもなく、あくまでも、日本人の感性や美意識を表現するために、私なりに考案した手立てのひとつという意味です。
このアーティストルームでは「秋田の美」のエッセンスとともに、海外からのお客さまには和のサプライズを、日本人のお客さまにはしっとりとした癒やしの空間を提供できればと思います。皆さま、機会があればぜひ一度パークホテル東京のアーティストルーム「秋田美人」にご宿泊を!この部屋以外にも趣向を凝らしたアーティストルームがたくさんありますので、いろいろな部屋にお泊りいただき、パークホテル東京のアーティストルームフロアーを存分にお楽しみいただければ幸いです。見学のみの場合は、数室のアーティストルームをホテルスタッフの解説付きで巡る「マジカルアートツアー」も開催していますので、そちらもぜひご利用くださいね。
http://parkhoteltokyo.com/event/magical-art-tour/