来春2013年4月に開学する
秋田公立美術大学は、秋田県の協力を得て、秋田市が設置する公立美術大学で、東北地方以北では、初にして唯一となる4年制の公立美術大学として誕生することになります。東北から北海道におよぶかなり広大なエリアに、今日まで国公立の4年制美術大学が1校もなかったことは本当に不思議です。全国的に見ても、国公立の4年制美術(芸術系)大学は数がとても少なく、これから開学する秋田公立美術大学を含めても、全部で6校*のみとなっています。
さて、すでにご存じの方も多いかと思いますが、この秋田公立美術大学は、基本理念やカリキュラムなどは全く新たなものになりますが、校舎や施設などは現在の
秋田公立美術工芸短期大学(通称=美短)のものをほぼそのまま引き継ぎますので、新大学開学のための施設整備はサークル棟などの新設や研究棟の増築のみとなっています。
その新大学の母体となる美短が位置するのは、秋田市の新屋という海側の地区で、JR秋田駅よりクルマで約20分、雄物川という大きな川に架かる秋田大橋を渡ったあたりにキャンパスがあります。少人数制の美術大学ゆえ、キャンパスの規模は一般的な総合大学に比べるとけっして大きくはないものの、1997年に施設部門のグッドデザイン賞を受賞するなど、建築物としても高い評価を得ている大学の施設群は、どこをとっても個性的で存在感たっぷりです。
特にその目玉といえるのは、中央部にエオス像が鎮座するサークルプラザ<上図 1>や大開廊と呼ぶに相応しいアトリウム棟とシンボルタワー<上図 2>、そして、風格さえ漂わせる実習棟<上図 3>(旧国立新屋倉庫を一部改装し使用 / 国登録有形文化財)ではないでしょうか。
この大学にはキャンパスの内外を隔てる塀や囲いのようなものがなく、キャンパス内には地域の住民の方も自由に出入りができます。これはまさに、地域とつながり開かれた大学を象徴しています。そして、そのキャンパス内に足を踏み入れてまず目にするのは、サークルプラザ(円形広場)に設置されたギリシア神話の曙の女神・エオスの像。この像はかなり巨大で、迫力十分です!そしてその向こうに見えるのは、三角のかたちを多用した意匠が特徴的なアトリウム棟とシンボルタワー。キャンパス内のそれぞれの棟をつなぎ、内部動線の要となっているアトリウム棟の内部は開放的な吹き抜けが気持ちいい大空間で、所々に彫刻作品なども展示してあり、ヨーロッパの美術館を彷彿とさせる雰囲気があります。そのアトリウム棟などの現代的な建築物とは全く対照的に、ここ新屋地区の歴史を感じさせてくれる建物が、大学の実習棟などとして使用されている旧国立新屋倉庫。国の登録有形文化財でもある8棟で構成される倉庫群は大学の実習施設として使用されているだけではなく、市民向けの大学開放センター、創作工房、市立図書館分館としても活用されています。この他にも、大小の講義室や各科の実習室、大学付属図書館など、美術を学び研究を深めるための施設設備が完備されています。この美的感覚を静かに刺激する素晴らしい施設、環境を有する秋田公立美術大学で、4年間じっくり美術を学ぶことのできる学生たちは本当に幸せだと思います。
* 国公立芸術系大学 6校
国立大学 1校=
東京芸術大学
公立大学 5校=
秋田公立美術大学 /
金沢美術工芸大学 /
愛知県立芸術大学 /
京都市立芸術大学 /
沖縄県立芸術大学