
秋田県の角館町(仙北市)は、「みちのくの小京都」と呼ばれ、秋田県を代表する観光地のひとつです。武家屋敷が多く保存され、今なお城下町の面影を色濃く残す町並みを散策していると、江戸時代にタイムスリップしたような気分が味わえます。先日その角館に、秋田公立美術大学の同僚の皆さんとともにお花見に行ってきました。東京あたりではもうすっかり桜の季節は過ぎ去っていますが、北東北の秋田ではつい最近まで桜が見ごろとなっていました。

今回は、秋田公立美大・事務局スタッフで、「美の国あきた」に精通する生粋の秋田人である水澤俊明さんにお世話いただき、私を含め、今春より全国各地から秋田公立美大に赴任してきた教員の皆さんと助手の皆さん総勢10名がクルマ数台に分乗し、秋田市内から角館に向かいました。私は今回のツアーを企画していただいた水澤さんが運転するクルマに乗せていただきましたが、車中では水澤さんから秋田県各地のさまざまな祭りや催しとその魅力をいろいろ教えていただき、「美の国あきた」にますます興味が湧く思いでした。

快適ドライブ約2時間弱で到着した角館は、今シーズン最後の桜の見ごろということで、やはり大勢の観光客で賑わっていました。この地は、秋田県の内陸部に位置するだけに、冬はかなりの積雪があり、寒さも尋常でありません。そんな厳しい冬を耐え、遅い東北の春に一斉に咲き誇る桜のなんと美しいことか!冬の厳しさがあるがゆえ、待ちわびた春をようやく迎えた歴史ロマンの町・角館に咲く桜は、また一段と格別です。武家屋敷通りには、樹齢数百年以上という風情ある枝垂れ桜の巨木が数多くあり、武家屋敷の黒板塀とのコントラストの妙は、これぞまさに日本の美!また、武家屋敷通りから少し歩くと、桧木内川の堤に出ます。この堤がまた圧巻!約2キロの桜並木が川の両脇を豪快に彩ります。この時期、本当に町全体が桜色に染まる角館。角館の桜は一生に一度は見た方がいいと言われる理由がよくわかりました。

今回の参加者はほとんどが「角館の桜」初体験とあって、皆さんもうすでにいい大人なのですが、好奇心全開で、ものすごいはしゃぎっぷりとなりました。秋田公立美大は開学して一ヶ月ちょっとですが、日が浅いゆえに、決めなければならないことが山積みで、教員、事務局スタッフともに猛烈に忙しい日々を過ごしているので、今回のツアーは参加者の心身を束の間でも癒してくれたことは間違いありません。また、癒し効果だけではなく、先生方それぞれの専門分野に関わる郷土資料や美術品なども、各先生の解説付きで興味深く堪能することができたり、角館の工芸品・樺細工(桜皮細工)の職人さんにもいろいろお話を伺ったりすることもできました。今年は秋田公立美術工芸短大(美短)から一人、樺細工職人を目指し、厳しい職人の道に入った卒業生がいるというお話もありました。

さらに、私のことですから、食い気も忘れていません。昼食には佐竹秋田県知事公認の角館の新名物「
佐竹北家伝承・御狩場焼き」をいただいたり、途中の屋台では、味噌田楽ならぬ味噌きりたんぽをいただきました。秋田杉でできた串は30cmくらいの長さがあり、そこにつけられたお米はもちろん秋田こまち!炭火で焼かれて、なんとも香ばしくホクホクで美味しい!さすが米どころ、食どころ秋田。屋台といえども、さすがの味わいなのです。実は私、角館は今回で二度目。前回は昨年の秋に訪れました。秋は紅葉が見事で、また違った風情がありました。次は雪深い冬に来たら、角館の凛とした表情が楽しめるかもしれません。
ともあれ、今回の角館ツアーは何から何まで、自称「水澤観光」の水澤さんにアテンドしていただき、とても充実した大人の遠足を満喫することができました。しかし、秋田の魅力はまだまだこんなものではないはずですよね、水澤さん!秋田の美を訪ねる旅、次はいずこへ?
ちなみに、仙北市観光課の発表によると、開花の遅れで会期を2度延長した「角館の桜まつり」(4月20日~5月12日)の人出は、昨年より19万6千人多い、141万7千人だったそうです。仙北市の人口は3万人ほどですから、すごい数字ですよね!角館の桜をまだご覧になっていない全国の皆さん、ぜひ来年あたり、ご覧になられてはいかがでしょうか。